「これが欲しい!購入したい!」と思う物件が現れたとき、どのような行動を起こせば良いのでしょうか?
今回はそんなシーンで役立つ「物件購入術」について詳しくお話したいと思います。
一般的に収益不動産は高額で、億を超える物件も珍しくありません。
できることなら、あらゆる角度から調査・検討してじっくり判断したいところですよね。
でも、実際のところゆっくり時間をかけている余裕はありません。
その理由は「売手市場」にあります。現在は少ない良い物件に対して、多くの投資家が「買いたい!」と手を挙げている状況なのです。
そのため、お目当ての物件を見つけることができたら、投資家に必要なのはスピードです。
まずは、そのスピードを活かすためにも、どのような物件調査を行ったほうが良いのかを、そのタイミングを含めてご説明しましょう。
ヒアリングに適した不動産会社って?
物件を決めてからの行動は大きく分けて2つ。
1つ目は受給のバランス、つまり収入が本当に見込めるかどうかということです。
例えば、投資家の皆さんのよくある思い違いに“土地勘”があります。
「自分が住んだことがある場所なら、よく知っているから安心だろう」といった、生まれ育った場所や、いま住んでいる地域に固執する傾向がみられますが、実際はそうではありません。不動産投資は数字が全てなのです。
もっとも重要なのは、賃貸需要が本当にあるかどうかをフラットな視点で見極めること。
その土地のその物件のその部屋が、どれだけの人に求められているかということを認識することが大切です。
本来、不動産賃貸業はサービス業ですから、その物件にどのくらいの人が入居するのか、どの程度の家賃なら入居してもらえるのかなど、「ニーズ」をしっかりと調べることが投資の成功を左右します。
そして2つ目は、周辺にある“ライバル物件”を知ることです。
同じ地域にどれくらいの空室があるのかを調査し、ライバルとなるその物件に、
どうすれば勝つことができるのかを考える必要があります。
そのためには、『アットホーム』などで周辺家賃の相場を把握することから始めましょう。
例えば駅から徒歩5分のワンルームだったら、同じ条件下のワンルームの検索をかければ、だいたいの相場を理解することができるでしょう。このようにインターネットを使えば、募集家賃の相場をカンタンに調べることができますが、実際にいくらで貸して、満室の物件がどの程度あるのかというコアな情報は、その町の不動産会社が一番知っています。
そこで、踏み込んだ情報を入手するためには、町の不動産会社に直接電話をして聞くのがいいでしょう。その場合、物件の管理数が多く大勢のスタッフを抱えた、ある程度の“パワー”のある不動産会社がベターです。
そうなると、ヒアリングに適した会社は『エイブル』『アパマン』『ミニミニ』といった大手企業になることが多いです。
ただ、全国的には無名でも地場では一番の営業力を持つ会社もあります。
その辺りの情報はきちんと調べてからヒアリングを行うようにしましょう。
ちなみに地元の不動産会社を調べるには「(対象の地名) 賃貸」といったワードで検索をかけたり、『アットホーム』や『スーモ』などの不動産情報サイトで、掲載している不動産会社をチェックすることができます。
調査不足で、大きなローンを組みながらも、さほど収益が上がらなかった事例も少なくありません。
こういった事例は、しっかり物件調査を行えば事前に失敗を防ぐことが出来るケースがほとんどです。
たとえ購入時に満室だった物件でも、永久に満室状態ということはあり得ません。高い買い物だからこそ、油断をせずに必ず調査をするようにしましょう。
知っておきたい!不動産投資のヒアリングテクニック
次に押さえておきたいのがヒアリングのテクニックです。
売り主にもよりますが、売り主から「物件名を出してもOK」と許可を得られたら、物件名を直接問い合わせることが可能です。
これが正しい情報を知る一番の方法ですが、売り主の意向により物件名を控えた物件もあります。
そのような場合は「○○町(対象の地域)で、こんな物件を購入したいと思っているのだけど……」と、物件名を出さずに、なるべく具体的な説明を心がけましょう。
ここで注意しておきたいのが、物件周辺の空室率が高い中で、その物件だけが満室となっているレアなケースです。そのような特殊な物件を目にしたら、なぜ満室となっているのか、その理由を必ず聞くようにします。
この場合、大学近くの物件で、周辺は家賃の安い木造の古アパートばかりという中、唯一のRCマンションであったことが人気の理由でした。その町で一番立派なマンションで、なおかつ、オートロックも完備されていたのです。
これから大学に通う、初めての一人暮らしをする娘さんにピッタリな条件をクリアしているため、常時満室な人気物件になっていたのでしょう。
親御さんからしてみれば、かわいい娘の一人暮らしですから、多少家賃が高くてもセキュリティがしっかりしたキレイなマンションに住まわせたいと思うものです。
こういったニーズにマッチして、この地域では珍しく常に満室という状況を生み出していたのです。
別の視点で考えると、大学の移転や新たなライバル物件が出なければ、このマンションの人気は安泰と言えます。
この事例からわかるように「ワンルームで駅から徒歩○分だから、家賃○万円で埋まる」といった単純な話ではなく、周辺環境の事情や、物件そのものの状態を調べる必要があります。
また、募集に対して発生するコストも確認しましょう。
広告費(客付けした不動産会社ヘ対する謝礼金)が何カ月分にあたるのか、フリーレント(家賃無料の期間を設けること)がカバーされているのかもポイントです。
もちろん、広告費を払ったりフリーレントをつけることは決してマイナスではありませんが、地域によっては一概にメリットとは言えません。
だからこそ、地域の相場や、入居付けをするためにかかるコストをあらかじめ知っておくことが大切です。
その結果、他の地域に比べてあきらかに広告費がかかるのであれば、需給バランスが崩れた“競争の激しいエリア”ということが判断できます。フリーレントについても、何カ月もつけなくてはいけないのであれば、同様の判断とみなして良いでしょう。
空室があればNG物件?
不動産会社が売り主となる物件の中には、1棟目でも融資がつきやすいように「半年?1年の満室保証」を付けていることがあります。
これも決してマイナスではないのですが、多くのコストをかけた上で“頑張って満室にした物件”だった場合、この後の運営が苦しいものになることが予想できます。
不動産賃貸業において、「必ず満室でなければならない」ということはないのですが、需要があるか否かは購入前にしっかりと調べておかなくてはいけません。満室状態で販売されている物件でも、蓋を開けてみれば多額の広告料とフリーレントの上で、無理に客付けをしている実態があるかも知れません。逆に空室はいくつか出ていても、適正な募集をしていればきちんと埋まっていく物件もあります。
つまり、満室であっても空室であっても、その理由をきちんと調べることがポイントです。
物件自体には全く問題がないのに、ただ単に売り主側にやる気がないために、きちんと募集をしていないケースもけっこうみられます。空室があるからといって“NG物件”と判断するのは早計です。
とは言うものの、初めての投資物件はなるべく空室が少ない方が良いでしょう。
その後も安定的に部屋を埋めることができるのか否かという「受給バランス」を、しっかりと確認するようにします。2棟目、3棟目になれば、1棟目で培ったノウハウを活かして、物件の価値を高めたり、募集のやり方を調整するなど、工夫を凝らした運営を実行することができるでしょう。
築年数からは建物の価値を判断できない
もう一つ頭に入れておきたいのが「修繕」です。
新築や大規模な修繕がされたばかりの物件であれば、当分は大きな修繕費用がかかることはないでしょう。
そのような物件は初心者にも扱いやすく、おすすめといえます。
逆に、割安な物件を購入して喜んでいたのもつかの間、すぐに1000万円くらいの修繕費用がかかってしまったケースもあります。
修繕費用がかさめば収支計算がまったく違ったものになり、キャッシュアウトを起こして、いきなり経営のピンチに立たされることも……。
また、修繕の程度は売り主に依る部分が大きく、同じ築年数の物件があったとしても、管理状態によって価値は変わってきます。だからこそ、「築○年以内ならOK!」と、単純に判断できるものではないのです。


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不動産会社が“売り主”の物件なら、本当に安心?
ちょっとした修繕ならいいのですが、建物の基礎や躯体などに重大な欠陥があった場合は、「瑕疵担保責任」といって売り主側に修繕義務が発生します。
売り主が個人の場合、瑕疵担保を3カ月付けるケースが一般的で、中には「瑕疵担保免責(売主は一切責任を取らない)」という物件もあります。
一方で売り主が不動産会社であれば、瑕疵担保が2年間付いています。
「中間省略」を行う不動産会社は、一見、割高な物件を販売しているように見えますが、瑕疵担保がカバーされている部分については安心して良いでしょう。
ちなみに「中間省略」とは「新中間省略登記」の略称で、業者による「直接移転売買」のことを指します。
この場合、投資家はすでに商品化された物件を購入することが可能です。
しかし、不動産会社は仕入のほかに、外壁や屋上防水などの大規模修繕、物件によっては満室保証も付けた上に、瑕疵担保もありますから、それ以上に利益を乗せなくてはいけません。つまり、投資家の視点で考えると手間がかからない分だけ、“割高な物件”を購入しているということになります。
どれくらい割高なのかといえば、自社の利益を大きく乗せている会社は利回り8~9%、良心的な会社だと10%超で販売しています(もちろん業者によってばらつきはあります)。やはり不動産会社選びは慎重に見極めたいところですね。
物件調査とは少し話がずれますが「購入先の選択」も大切です。
業者=売り主であっても、不当に利益を取らないようであれば大丈夫だと思います。
イールドギャップ(利回りー金利の差。最低6%は欲しいところ)がきちんと確保できていること、要するにキャッシュフローが出ていれば問題はありません。
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多少利回りは低くなったとしても不動産会社が売り主の物件を買うか、逆に利回りは上がるけれども、瑕疵担保がついていない物件を買うのか。そこは、投資家それぞれの考え方次第です。
どちらが良い・悪いということではありません。
利回りの部分と安定経営、融資につながる部分を秤にかけて、判断することになります。
現地調査のタイミングは買付け後に
現在はインターネット上であらゆる情報が見られますし、肝心な需給バランスも電話でヒアリングすることができます。
つまり、ほとんどの情報は現地にでかけることなく入手できるため、サラリーマン投資家にとっては、非常にありがたい環境が整っています。
さらに電話ヒアリングでは、物件に関することだけでなく、地図に載っていないヤクザの事務所とか宗教施設といった、マイナス要因になりそうな場所も聞き出すことができます。
こういった机上調査において欠かせないツールに『GoogleMaps』があります。住所を打ち込むだけで、物件周辺の環境を全て把握することができます。このツールのおかげで、実際に現地に出向くのは、最終的な判断を行うタイミングでよくなりました。
かつては、物件情報が出たら現地調査を行い、その後で買付けを出すという一連の流れがありました。しかし、現在は完全に逆転し「現地調査は買付けの後」というスタイルが定着しつつあります。
もちろん、物件の所在地が物理的に近ければ現地を見てからの判断がベターですが、遠方になるとその間にライバルに取られてしまう恐れがあります。
いま、投資家に求められるのはスピードです。
物件を見つけてから行うのは現地調査ではなく、管理会社や仲介会社へのヒアリング、需給バランスや修繕履歴のチェックが優先です。現地状況に関しては、主にGoogleMapsで調べる程度で、机上の調査、電話調査が要になります。
そして、「これは買っても良い!」という決断をなるべくスピーディーに行い、買付証明(購入の意思表明する書面)を入れましょう。
現地調査では、ここを必ずチェック!
なお、スピードを重視することは大前提ですが、現地調査をないがしろにしてもよいわけではありません。現地調査では机上でリサーチしたことをしっかりと確認する必要があります。
事前に現地情報を把握していれば、一から調査をすることはなく時間もかかりません。しかし、騒音や異臭など実際にその場に行ってみないとわからない情報もあります。また、業者に対して行ったヒアリングを、現地で再びヒアリングすることも重要です。
こうして現地へ赴いて調査を行った結果、「やっぱり購入しない方がいい」という結論になることもあります。買付証明書には法的拘束力がないので、最悪取り下げることも可能です。しかし、契約に進めば法的拘束力が発生してしまうので、その前にしっかり調査をして、賢明な判断をするようにしましょう。