不動産購入に必要なスキルは“素早い決断力”
売り手と買い手のパワーバランスは、完全に“売り手の方が上”です。
現状は、不動産会社側がお客さんを選んでいる状態です。「この人になら良い情報を回したい、この人に物件を買ってもらいたい」と、不動産会社に思ってもらえるように、まずは1棟を購入することも良い方法だと思います。
特に初心者にとって、最初の1棟を買うことはとても勇気がいる行為です。
しかし、買付け判断をスピーディーに行わないと良い物件もほかの誰かに取られてしまいます。
じっくり選んでいたら、優良物件を手に入れることは不可能だと言えるでしょう。
不動産投資は、実際に物件を購入してみないとわからないことも多くあり、その点が投資としてのリスクです。
だからこそ、そのリスクをどこまで許容できるかを自分で判断する必要があります。
物件購入にあたっては、ある程度の知識を身につけることは最低条件。
勉強不足だと間違った判断をすることもありますし、悪い相手に当たった場合は騙されることも考えられます。
一方で「○○でなければいけない」と、自分のルールに固執したり、「全ての知識やリスクを購入前に把握しておきたい」という考えの人も、優良物件を掴むチャンスを逃す傾向にあります。
まずは思いきって1棟目を購入することで、営業マンからの信頼を得ることができますし、「この人は本気で購入したいお客さんなのだ」と認識されます。
そうすれば2棟目、3棟目の物件も買いやすくなるでしょう。
とはいえ、なんでも良いから1棟購入を!というのはあまりにも無謀ですね。
まずは、1棟目を購入するために、素早い決断を心がけましょう。
不動産会社は良いお客さんにだけ良い情報を回すものです。
購入できる力があって、すぐに決断してくれるお客さんこそが、営業マンにとっての「理想のお客さん」です。
その“決断の証”となるものが買付け証明書です。
買付け証明書とは、「私はこの物件を○○円で購入します」という意思表示をカタチにしたものです。
とはいえ、買付証明書そのものには法的な拘束力はありませんから、途中で取り下げることは可能です。
しかし、それを繰り返すと不動産会社からの信用を無くしてしまいます。
買付け証明書を提出するということは「この物件を買いたい!」というアピールですから、むやみに出すのではなく、本当に買いたいと思う物件に限るようにしましょう。
ただし、“きちんとした理由”がある場合は取り下げることも一手です。
以前、家賃照会をしていたところ、相場家賃に比べて1万円も高く貸していることが判明し「なぜ高く貸しているのか。その理由に納得しない限り買えない」ということに発展したケースがありました。
確かに一部屋につき1万円もの家賃が違ってくれば大きな問題ですよね。
その後、売り主から「家具・家電付なので相場よりも高く貸している」という返答がありました。
結局、その家賃をキープするために家具・家電を買い直す必要が発生し、購入コストを計算した結果、収支が合わないため、購入を止めることになったそうです。
このような“きちんとした理由”があれば、不動産会社側も納得してくれるでしょう。
良い物件なら、満額で買付け殺到も
前にも解説しましたが、買付けにおける価格交渉や購入金額を詰めていくタイミングは、現地への物件調査の前段階です。
より詳しく言うと、机上の調査を経て判断し、買付証明を出して、その後に物件調査という流れになるので、「調査と並行して買付けを出す」というイメージになります。
そこまで急いで行動する必要があるのは、くり返しになりますが、「スピードを重視しなくては買えない市況」だからです。
いま、本当に良い物件は飛ぶように売れてしまいます。
私たちが取り扱っている物件もそうですし、私たちが扱わないような戸建てや小さめの木造アパートでも割安なものは瞬殺で売れていきます。
そのため、投資家自身が「買える基準」をしっかりと持っていなければ、瞬時に手を挙げることもできないのです。
逆に、スピード重視だからといって、ついつい焦ってしまう投資家もいますが、私の場合は「買ってください」と一切言うことはありません。
「買う、買わない」の判断は、あくまでも投資家にあります。「悩むようだったら、今回は見送った方が良いですよ」というスタンスです。
そのかわり、「これだ!」と思う物件に出会ったら、とにかく速やかに買付けまで行いましょう。
満額(売り出し価格)で、5人も10人も買付けを入れてきますから、そこには価格交渉の余地はありません。
とはいえ、すべてのケースで買付けが殺到するわけでもなく、物件に対する人の好みは十人十色。「これは!」と思う基準も人それぞれあります。
物件の特長はいろいろあって、積算はなくても高収益な物件や、とにかく割安な物件、利回りはさほどなくても収益が安定していて手間がかからない物件、立地がとても良い物件など、まさに多種多様。ひと口に「良い物件」といってもそれぞれ異なったセールスポイントがあります。
もちろん、「今ひとつな物件」も種類があります。
建物の状態が良く入居率も高いけれど、とにかく高額だったり、立地は最高なのにボロボロで修繕費が発生しそうな物件など、“惜しい部分”が目につくことも。しかし、これらは価格が下がれば「良い物件」になりますし、ボロボロな状態でも修繕費を織り込んで数字が合えば(または修繕費も融資でカバーできれば)「買える物件」に一変します。
このように、欠点が目立ち、いつまで経っても売れない物件に対しては、価格交渉の余地があるでしょう。
どんな物件なら指値が可能か?
次は、そういった物件を「指値」する方法について具体的に説明していきましょう。












指値を成功させるための絶対条件
指値が実現できるかどうかは、売り手と買い手のパワーバランスによって決まります。
買い手の方が有利であれば、指値が成功する可能性が高いでしょう。
例えば、「売れ残っている物件を現金買いしたい」という買い手は“強い”です。
逆に、融資が付くのか分からない状態なのに指値する買い手は“弱い”と言えます。
想像してみてください。1億円の物件を融資特約を付けて8,000万円で買いたいと買い手が指値しました。
売り主からすれば、「その融資は本当に通るの?本当に買えるの?」と思うのは当然でしょう。
必ず購入してくれるのならともかく、買うか買わないかも不確定なのに、2,000万円も値下げするのは厳しいですよね。
しかし、「8,000万円の融資が必ず出る」という裏付けがあれば話は変わってきます。要は指値してもいい人というのは“資金面の裏付けがしっかりしている人”とも言えます。
ところで、ある不動産投資家が執筆した本に『3日以内に現金で決済する』との一文がありましたが、これは正解だと思います。
3日以内に決済するからこそ、“鬼指”ができるわけです。それが本来あるべき“指値”ですが、最近はその言葉だけがひとり歩きしているようにも感じられます。
不動産会社は安く土地や物件を購入することができますが、指値ができるのは、やはり現金決済をモットーとしているからです。
一般的に、業者の取引では融資特約を付けることはありません。指値した上で融資特約を付け、その融資が承認されなかったとしたら、売り主さんに合わせる顔がありません。
一般的に考えても「買えるかどうかわからないのに安くしろ」というのは、全くナンセンスです。
売買仲介業というのは、言わば物件の橋渡し役。理由なく一方だけが損をする提案はあり得ません。
もし、物件が売れずに価格も下がってしまったら「もう、おたくの会社には任せたくない」と売り主から言われても仕方がありません。
そういう意味では、資金源の裏付けもなく指値を要求する人は、お客様ではなく“冷やかし”とも捉えられます。
物件取得に関して一生懸命取り組んでいるつもりでも、不動産会社からは“冷やかし”にしか見られない……。
これは、不動産投資家として致命的です。
また、本人が無自覚でも、そのような言動をしている投資家が多いのも事実。
このように、「指値はするもの」ではないと認識してください。